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不意にスエット姿の男が立ち止まり、児童達に向かって振り返った。
児童達の行く手を阻むように仁王立ちになる。
「糞ガキどもめ……
男のクセに女の子イジメか?」
特に声を荒げたわけでは無いが、大人の男ですら怯むような威圧感を児童達にぶつける。
唖然とする者……あきらかに怯えた表情を浮かべた児童が大半の中で、ガキ大将らしき児童が好戦的な瞳を男に向けていた。
「ったく……」
ため息をつきながら男がガキ大将に近付いた。
児童達には、防犯の為に名札は無い。
男はガキ大将のランドセルを見渡し名前を確認する。
「俺はガキは殴らない。
でも、お前の父ちゃん知ってるぞ……お前の父ちゃんイジめてやろうか?」
ガキ大将が怯えた表情を浮かべたのと同時に、児童達が蜘蛛の子を蹴散らすように一斉に逃げ出した。
「ちっ……これじゃ不審者としてマークされるな。もうこの手は使えないか……」
児童達に取り残された男は、一人言を呟くと、猛スピードで走り出し、一瞬で桃華を抜き去ると姿を消した。
「チリーン」
ドアベルの音と共に桃華が『cafe BILLY』へと入って来た。
「おかえり」
辰也が明るい声で桃華を迎えるが、何故か息が荒く額に汗をかいている。
桃華は無言でカウンターの中に入ってくると、そのまま店の奥にある居間へと向かい、ランドセルを置いて再びカウンターへと戻って来た。
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