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「んん……」
子供の居ない辰也にとって、育児は未開の荒野に等しい。桃華の問いに辰也が困ったように悩み出した。
「作るもんじゃ無いか………」
ポツリと呟いて話を続けた。
「一人はつまんないだろ?」
「───」
桃華には、小学生になってから友達は居ない。
不思議そうに辰也を見つめる眼差しに、辰也は更に困り果てた。
「……友達は、作るって言うより、出来るモンかなぁ………学校に、この子と仲良くなったら楽しいだろうなって奴は居るか?」
今度は桃華が考え込む。
「もし、そんな子が居たら……桃華はその子と友達になりたいってシルシなんだよ。クラスに一人ぐらいは居るだろ?」
「……よく…わからない」
悲しげな表情を浮かべて桃華がうつ向いた。
「……そっかぁー……」
無理矢理、笑顔を作った辰也が、明るい声で話題を変えた。
「桃。宿題あるんだろ?
一緒にやろう。持って来な」
店内に客は居ない。辰也は桃華が居間に宿題を取りに行ってる間に、カウンターを出ると、カウンター席へと異動した。
店に客が居ない時はカウンター席、居たら調理台を机替わりにして宿題をやる事が日課になっていた。
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