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辰也が桃華の宿題を見ていると、隆円が店に訪れた。
桃華が『cafe BILLY』に来るようになってから、この時間帯に頻繁に来店するのだが………
「桃ちゃん、こんにちわ」
「───」
「学校は楽しい?」
「───」
いくら隆円が桃華に話し掛けても、会話は成立しない。
それどころか桃華は隆円を見ようともしない毎日が続いていた。
「つる。 お前、顔怖いよ!
コーヒーなら幼稚園で飲めよ」
辰也がコーヒーを出しながら、険しい眼差しで桃華を見つめる隆円に、呆れたように言った。
隆円はコーヒーを受け取ると、そのまま一気に飲み干す。
この男の喉に熱いと言う感覚はあまり無い。一気に飲み干し、胃袋に熱く染み渡る様が快感らしい。
「辰兄……人のツラ、怖いだなんてあんまりだろ。それに俺はつるじゃ無いって」
美加がこの店に訪れてから、辰也は隆円を『つる』もしくは『つるぴか』と呼んでいた。
「お前、桃華にガン飛ばしてんじゃねえよ。そんな目付きで睨まれたら、桃華が怖がるだろ!」
「えっ!? そうか?
そんなつもりは無いんだが」
慌てたように答えながらも、再び桃華を見つめた眼差しはやはり険しい。眉間にシワを寄せ、目を細めるように桃華を見つめているが、桃華とは微妙に焦点が合っていない。
隆円がカウンターの中に居る辰也に視線を向けた。
「辰兄。 夜また来るよ」
何故か真剣な表情で辰也に告げると、慌ただしく店を後にした。
「ったく…忙しい奴だな」
ぼやきながら辰也が、隆円の使ったカップをかたずけていると、ドアベルが鳴った。
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