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 早苗はうつむきながら額を押さえた。 「桜ってば、その場で羽沢愛莉の胸倉つかんで張り倒そうとするんだよ? 止めるの大変だったんだから。また停学くらったら、おばさんが泣くよ」 「おやおや……。桜に告白したっていう坊やも、それ聞いたら真っ青なんじゃない? 桜は見た目と中身が全然違うからねぇ。黙ってれば綺麗なお人形さんなのに」  そう言って、くすくすと恵美が笑う。 「ふん。外見だけに惹かれて中身に向き合えないようなヤツは、自分好みにカスタマイズできる綺麗なお人形に囲まれて、家でひとりで遊んでりゃいいわ。くだらない」 「これだもんねぇ。……あー、ちょっとごめん。電話だ」  カバンの中をガサガサとかきまわし、携帯を取り出して席を立った恵美は、そのまま化粧室のほうへと消えていった。 「──で、けっきょく早苗が私たちを呼んだ理由は何? 私たちが出るような厄介ごとではなさそうだし? 怒り狂ってる桜がその羽沢愛莉とやらをシメに行かないようにするための足止め?」 「朱音ちゃん、もうちょっとオブラートに包んだ言い方してよ」 「まわりくどいのは嫌いなの。知ってるでしょ。なに、これからゲーセンでも行く? 少しは気がまぎれるかもよ」
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