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「朱音ちゃぁぁん! ほんとにちゃんとこっちの話を聞いてくれてる!? そんなとこ行って、桜が誰かとケンカでもしたらどうするの!? 桜、すぐ男に声かけられるの知ってるでしょ!」
そうしてしつこく声をかけられた結果、ムシの居所の悪い桜子が相手を殴るというのがいつものパターンだ。
携帯をいじりながら悠然とカクテルを飲んでいる朱音の腕をつかみ、早苗が言い募る。真面目に話を聞いてくれと。
「失礼ね。ちゃんと聞いてるわよ」
携帯の画面から目を離さずに朱音が答える。
朱音と早苗が押し問答をしている間に電話を終えて戻ってきた恵美は大きく息をつき、とんと朱音の肩に手をおいた。
「ちょっと朱音、あんた一杯だけとか言いながら、なに私のぶんまで飲んでるのよ」
「は?」
朱音がテーブルを見ると、たしかに恵美のグラスが空になっていた。
「私は飲んでないわよ?」
「私も」
朱音と早苗が口々に答える。
と、三人の視線は自然と残りの一人に向いた。
「あんた、もしかして私のドリンク飲んだ?」
答えは聞くまでもなかった。
明らかに桜子の顔が赤くなっていた。
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