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「おねーさん、もうすぐ殺されちゃうよ」
「……は?」
「殺されるよ、おねーさん」
何を言われたのか理解できなくて、桜子は何度も目を瞬いた。
周囲の喧騒のせいで少女の言葉をうまく聞き取れなかったのかと、まだ耳に入っていた片側のイヤホンをはずし、少女に顔を寄せる。
「ごめん、よく聞こえなかった。何だって?」
「だから、殺されるよって言ったの」
「誰が?」
「おねーさんが」
少女は一歩下がり、まっすぐに桜子を指差した。
少女は愛くるしい笑顔を浮かべたままだ。
だからこそ、よけいに紡がれる言葉は冗談にしか聞こえなかった。
「困ったお嬢ちゃんねぇ。それなに? アニメか何かのセリフ? 超能力者ごっこはお友達とやってね」
「困ったお嬢さんはおねーさんのほうだよ。何も分かってないんでしょ。自分がどんな恐ろしい間違いを犯したのか」
「恐ろしい間違い?」
「そう。おねーさんはもう罪人なんだよ。罪人には罰が与えられる。だから、殺されるの」
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