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「彼があんたに気があるなんて許せないとか言うくせに、彼の告白を断るあんたは何様だとかほざきやがるのよ。意味わかんない!」
がんがんがんと、桜子がこぶしをテーブルに叩きつける。
「はいはい。そりゃそうでしょうね。私もあんたが何をそんなに怒ってるのか、全然意味わからないわ」
揺れるテーブルのせいで波立つ中身がこぼれないようグラスを持ち上げ、朱音は肩をすくめた。
「だからっ、羽沢が私を侮辱したの! 下等生物のくせにとか言って! そっちこそ何様なんだっつーのよ!」
「下等生物ねぇ。どっちかというと、野生動物って感じだけど。まあ、そんなの放っておきなよ。たとえ桜がなんであろうと、その羽沢とかいう子の片想いの相手は、桜のことを好きになったんでしょ? だったら、桜を侮辱するってことは、片想いの相手も侮辱してるってことよ。つまり、そんな相手を好きな自分自身も貶めてるってことなんだから、馬鹿なのは羽沢って子のほうでしょ。冷静に考えれば、鼻で笑って済ませられることじゃない」
「だけど、下等生物って何よ! 理屈なんかどうでもいい。言われたこと自体が腹立つの!」
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