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手を振って、彼に背を向けたあたしに 「ウサちゃん!」 彼が呼んだ気がした でも振り返らないで、あたしは事務所に戻った 「薫ちゃん、お疲れ~!」 事務所のドアを閉めて、頭を脱いで‥‥‥ 「‥‥‥薫ちゃん?‥‥」 楽しかったから、沢山汗をかいて‥‥‥身体中冷えてしまった‥‥ 「‥‥泣いてるの?‥‥」 名前も知らないあの人に、顔も知らないあの人に‥‥ もう会えない事が、こんなに寂しいだなんて 「そーか、そーか!薫ちゃん、バイト最後で感極まったかぁ!」 「薫ちゃん!また試験終わったら来てくれていいから!」 これって、恋‥‥だったのかなぁ? 「俺と会えなくなるのがツラいのかぁ、薫ちゃん、嫁に来るかぁ?」 これが、恋だとしたら なんて短くて切なくて でも‥‥楽しい恋だったなぁ あたしは、この冬 名前も顔も知らない人に それはそれは短い ‥‥‥‥恋をした
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