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オワリエリア
山道
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運命とは、数奇なものだ。
幸村の口から"ぬらりひょん"の言葉を聞いたその半日後の今、ルシフェルはその"ぬらりひょん"と対峙しているのだから。
─────遡る事1時間前。
ここは道無き山道。密集する木々や、ぬかるんだ苔類が行く手を阻む地域。
日も暮れて、辺りは暗闇に包まれていた。
本来、人間などいないはずの場所と時間だ。
しかしデワエリアへと向かうルシフェルの視界に入ったのは、1匹のモンスターが旅人を襲っている所だった。
迷い込んだのか、自分の意思で入り込んだのかは不明だ。いずれにせよ、その旅人は既に戦意を失い、逃げ惑うだけだった。もはやモンスターに捕まるのは時間の問題だ。
しかしこういう場合、ルシフェルは旅人を助けたりはしない。
人は、他の生き物を食べる事で自らの命を繋ぐ。モンスターもまた、生きる為には他の生き物を食べる必要がある。その対象が人間だと言うだけだ。
吉乃や幸村といった存在が、ルシフェルを人間びいきにさせている部分はある。しかし食物連鎖の事情、生きる為の殺生ならば、特定の生き物に肩入れをするのは宜しくない。
そうルシフェルは考えている。
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