第01章 逢[あい]

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『人間の命は尊い』という倫理観は、人間が持てばそれで良いと言う事だ。 故に、ルシフェルはどちらの味方もするつもりは無く、その場を素通りしようとしていた。 しかし2つの点で、その状況が変わった。 1つ目。 旅人を襲おうとしていたモンスターは、ルシフェルをも襲おうとしたのだ。 「全く─────二兎を追う者……とは、この事だな。最も、これも人間の考えだが」 旅人とモンスターの間の出来事であれば、関与する気は無かったのだ。しかし自分にまでその牙を向けるのなら話は別だ。ルシフェルは目の前の火の粉を払おうとする。 そして2つ目。 さらにそのモンスターの言い放った一言が、状況を一変させた。 「貴様モ"ぬらりひょん"様ノ生贄ニナッテモラウ!」 生贄───── 奴は確かに、そう言ったのだ。 その言葉は、ルシフェルに経験上「生きる為の殺生」ではないと判断させた。 幸村から聞いた"ぬらりひょん"と言う名も相俟って、ルシフェルは「そのモンスターを無視すべきでない」と結論した。
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