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『人間の命は尊い』という倫理観は、人間が持てばそれで良いと言う事だ。
故に、ルシフェルはどちらの味方もするつもりは無く、その場を素通りしようとしていた。
しかし2つの点で、その状況が変わった。
1つ目。
旅人を襲おうとしていたモンスターは、ルシフェルをも襲おうとしたのだ。
「全く─────二兎を追う者……とは、この事だな。最も、これも人間の考えだが」
旅人とモンスターの間の出来事であれば、関与する気は無かったのだ。しかし自分にまでその牙を向けるのなら話は別だ。ルシフェルは目の前の火の粉を払おうとする。
そして2つ目。
さらにそのモンスターの言い放った一言が、状況を一変させた。
「貴様モ"ぬらりひょん"様ノ生贄ニナッテモラウ!」
生贄─────
奴は確かに、そう言ったのだ。
その言葉は、ルシフェルに経験上「生きる為の殺生」ではないと判断させた。
幸村から聞いた"ぬらりひょん"と言う名も相俟って、ルシフェルは「そのモンスターを無視すべきでない」と結論した。
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