【第一章】 『緋咲茜による愛情の世界』

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この着信音には夢も希望も無いのであり、期待など決して持ってはならないのだ――。 どうせ 【★オススメ★ 3日で500万円稼げるアルバイト!】 なる、胡散らしい文面のメールに違いない。 ふう、やれやれだぜ。 3部主人公張りの溜め息を一つ吐いて、 やはりアドレス変更をするべきだろうかと、現在の気に入っているメールアドレスを名残惜しく思いながら、“念の為”受信したメールを確認した――。 ―――― 送信者:御影ひかり 題 名:無題 【本 文】 すまない、“冠”。 部活で用事が出来てしまって、今日はどうも手伝いへ行けそうにない。 ―――― ――とまぁ、そんな訳で、 僕は頼みの副会長にフラれてしまった。 悪い方向へ予想をしていた迷惑メールでは無かったが、 これなら迷惑メールの方が未だ良かった。 元より無かったやる気が、地の底へ沈んでしまった。 このまま沈んでブラジルまで行けてしまえそうな勢いだが、きっと途中のマグマで焼け死ぬのだろうな――。 ――と、 弱音を吐いて逃げ出してしまいたいのが正直なところだが、生憎僕はそんな事が言える立場に無い。 それに、ここで逃げ出したら、御影のせいで止めたみたいになってしまう。 覚悟を決めろ、雲村冠。 お前が今此処で頑張れば、明日のお前には穏やかな学園生活が待っている。きっと、夢色の青春ラブコメが待ち受けているに違いない。 僕は己に喝を、鞭を入れ。 飴をちらつかせて、学校規則の束を睨み付けた。
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