【序 章】 『雲村冠による幸せの学園』

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―――― 天井から床まで、その殆どが木造りの建屋。 此処は『私立明星学園高等部』が体育館。 日の高度もすっかり傾き、 落ち着いた10月の日差しが窓ガラスを介して館内へと侵入する。 保護塗装の為された床に反射し、眩い琥珀色の光を撒き散らす。 天井灯は灯ってはいるが、全くと言っても良い程に役目を為しておらず、正に昼行燈。 館内の光量の殆どが、それで賄われていた。 この場所は現在、 全校生徒・教職員が集い『生徒総会』の会場となっている。 青藤色のブレザーコートに、白いワイシャツ。 茜色のネクタイ・リボンに、鈍色格子柄のスラックス・スカート。 コートの胸元には、アルファベットの“M”と“J”を重ね合わせてロゴ化された学園名。 生徒達は、揃いも揃って皆が同じ服装で正面のステージを向き、整然と立ち並んでいる。 「“生徒会長”就任挨拶。 “第13代”『雲村 冠』[クモムラ カンムリ]生徒会長。」 ステージ横、 左腕に赤の腕章を巻いた女子生徒がスタンドマイクを前に言う。 その言葉に、一人の男子生徒が反応を示した。 男子生徒はステージに向かって、静かに動き出す――。 この生徒もまた、腕に赤い腕章。 そこには、白い文字で『会長』と記されている。 男子生徒はそのままステージを上って、中央、演台の前でようやく停止。 90°ひらりと身体を回転させて、 大軍勢を相手に一人正面を向いた。
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