【序 章】 『雲村冠による幸せの学園』

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鋭敏な印象を受ける細く整った背格好に、インドア具合が見て取れる白い肌。 夏も終わったばかりなのに――と、思う所である。 目は猫の様に大きく“くりくり”としていて、頭髪は“くしゃくしゃ”の黒。 先の表現を流用し、言ってみれば、宛らペルシャ猫の様な気品さが感じられる。 男子生徒は、 慣れた口振りで語り出す――。 「皆さん、おはようございます。 本日付けで、本明星高等学校の13代生徒会長を務めさせて頂く事になりました。 2年5組『雲村冠』です。 先ず初めに、“12代生徒会役員の皆さん”。 今日まで長きに亘って、私たち一般生徒の為に尽力して下さった事。 並び、この様な素敵な舞台を用意して下さり、本当に有難うございます。 自身の勉学の時間を削り、行事の運営から私たち後輩の育成まで多方面にご活躍なされた皆さんは私の道標であり目標です。 下等な私では役者不足だと思うところですが、先人方が築き上げた生徒会長の名を汚さぬ様、水火も辞せずの決意で尽瘁してゆきます。」 生徒会長はステージ下、赤腕章を巻いた集まりに身体を向けて頭を下げた。 2秒強の時間頭を下げ、そして、言葉を続ける――。 「さて――、 今度は皆さんに質問です。 皆さんは『幸せの総量』と云う言葉をご存じですか? 現実、 この不平等な世界を悲観的観点から論じたものです。 世界の“幸せ”の総量は常に決まっていて、それは全ての生物を幸福に出来る量に対し圧倒的に足り得ていない。
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