プロローグ

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薄暗い室内。 二十年前に流行ったバラード『茶茶・茶火萬(チャチャ・チャッカマン)』のジャズアレンジが流れている。 ホワイトボードに書きなぐられた文字の羅列 『デトックス』 『むしろスカトろ』 『口説く技術』 『伝える技術』 『技術の技術』 『風俗嬢に』 『開かれた茶道』 『和合を以て尊しとナス』 部屋に入ってきた若い女、立ちすくむ 女 「あの、会議が終わったと連絡を頂いたのですが、まだ議題が残っているのでは」 覆面の男1 「どうしてそう思うのかね」 女 「皆様の顔があまりにも暗いので」 男1 「ああ、確かに会議は煮詰まっていた。しかし。大いなる悲観は楽観に通ず、だよ。解決したんだ」 男、一歩踏み出す。 女、まるで女装している担任教諭を見てしまったかのような足取りで下がる。 それを見越したかのように、ドアの前に立つ覆面男2 「我が立杉(たちすぎ)流を救うのは女性である君しか居ないのだ」 女 「まさか、そんな」 悲鳴に近い声をかき消すように、音楽のボリュームが大きくなる。 いつしか『茶茶・茶火萬』はロックアレンジのものに変わる。 茶筅【※1】のような髪型の女達がくるくると回転しながら登場。 緑に染めた腕をまげ、ラインダンスを始める。 次第に煎茶のような淡い黄緑色に包まれる。 ー緑転ー 【※1】茶筅(ちゃせん)抹茶を泡立たせる道具。竹を細く割いて先端は丸みを帯びている。竹は節があり、先端はデリケートなので扱いに注意が必要。強い力でしごかないこと。
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