第一幕・密命

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弱小茶道流派、立杉流の本部。 幹部が集まり絶賛密談中。 幹部A 「やっぱりウチみたいな弱小がさ、協会から予算ぶんどるには、集客力を見せるしかないと。 それなら古株も黙るでしょう」 幹部C 「しかしね、君。これはかなり賭けだよ。茶道協会から睨まれかねない。 特にこの、対象者を絞って茶道の魅力をピンポイントに教えるというのは」 幹部A 「ええ、本来なら稽古を続けた果てにやっと習得できるものですからね。 反発は必至でしょう。 しかし、メリットを見せないと人は寄ってきません。 全て実現しなくても良いんです。まずは花火を打ち上げて注目させること。」 比較的若いAが、ビジネス書で仕入れたような薄っぺらい言葉を振りかざす。 幹部B 「私はこの案は賛成ですよ。『客を恋愛相手としてシミュレーションする亭主』【※2】少女漫画の発想で、とあります。 女子高の講演などには良いアプローチかと」 幹部C 「そうか......私はまだ頭が固いのかな。 この、『商社のビジネスマンに、真心を伝える技術を』というのは好感が持てたが」 幹部A 「ええ、でもこれ他の流派でも出来ますから。しかももっと予算バンバン掛けて」 ため息で合唱が出来そうだ 幹部C 「婚活と絡めた企画もあると聞いたが」 幹部A 「ええ。独身男性をターゲットに展開する予定です。美人茶道講師と四畳半に二人きり。 良いと思うんですけどね。 ワンドリンク(抹茶)制ですし。」 幹部B 「それは指名制ですか、チェンジありの?」 幹部A 「いえ、それはどうしましょう」 幹部C 「バカいうな。 いいか、会話を楽しむんじゃない。 もてなしのプロとしての技術を提供するんだ。 指名は、二回目以降しか認めん」 【※2】もてなす側を亭主、お茶を飲む方を客と呼びます。客が複数いる場合は 順に「正客」「次客」と呼ばれます。 正客は、亭主と会話のやり取りをする事もあります。お茶会などでは、亭主の点てた茶を正客に出し、次客からは裏で点てたものを運ぶことが多いです。 例えるならカノジョとセフレですかね。
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