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「なんだ、――?」
顔にかかった糸のようなものを取ろうとした時、――バサッと音を立てて顔にモジャモジャとしたものが落ちてきた。
悲鳴こそ堪えたが、何かわからず気味が悪い。
慌てて払いのけようとする。
苛立ちと、見えない物に対しての恐怖。
握ったものは柔らかで手の中で輝いているように見えた。
不意に湧く好奇心。
そっと撫でると温もりはないが毛のように柔らかい。
――長い、糸?
「ああああああああああああああああ!」
甲高い声とともに更になぜかまたバサリとものが落ちてきた。
「ごめんなさい!」
その声に、思わずビクリと肩が震える。
ガサッと上の方で木々が揺れる音と、
「今とりますから! あ、足滑る!」
慌てたような幼い少女の声。
慌ただしい声が聞こえてくるが、最初の悲鳴がまだ頭の中に響いているようだ。
シモンは耳を抑えて整った眉をしかめた。
「誰かいるのか?」
どこを向けばいいのかわからない。
こういう時は視力が悪いのは不便だ。
ミシっと木が鳴る。
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