平成元年

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 この戦闘で、双方共に意味のない犬死となる者が多く出るのだろう…相対する者同士、皆同じように感じている。  こんな下らない事で命を落としたら…今までの、長く苦しかった修行と闘いは何の為だったのだろうか? 苦労して命がけで磨き上げて来た技や術は…何の為だったのだろうか?  皆、心の奥に怒りと疑問が渦巻いている。 しかし、これが蒼空達のいる世界なのだ。 誰一人として、不満を口にする者はいない…ただ、冷静に目の前の敵を討つ事のみに集中する。  出陣の前に、みんな家族の写真を見つめ…そして燃やしている。 恋人や兄弟の写真を燃やしている者も沢山いる。  これは、一種の願掛けなのだ。 里に残る愛する者達に、また会える事を願う…しかし、帰ることが叶わない時には…この者達に災厄が降りかからないように、幸せに生きていってほしいと願っているのだ。
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