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「僕は一条という籠の中から大空に飛び立ったんです。拓也が翼を与えてくれたお陰で、やっと自由に羽ばたくことが出来るようになったんです」
やはり雅臣は自ら一条の鎖を解いてきたようだ。
その穏やかな声に、例え雅臣に捨てられても、雅臣が自らの足で歩んでいかれる人生を陰ながら応援したいと思った。
「これから永久に、拓也と並んで飛んでいけるんですよ」
これから? 永久に? 俺と並んで?
雅臣の発した言葉の意味を理解できるまで数秒を要した。
「僕は永久に拓也を愛し続けると誓ったでしょう?」
言葉の意味を理解してもまだ混乱している俺の顔を、背後から抱きしめたまま覗いてくる雅臣。
雅臣は俺に別れを告げにきたわけではない。
今でも俺を愛していて、永久に愛し続けると誓ってくれた。
「まさ……おみ」
俺も永久に雅臣を愛し続けるよ。
ずっと雅臣に会いたかった、触れたかった。
それなのに、突然目の前に現れた雅臣に、雅臣の想いを疑うようなことを考えてしまった。
ごめんな……。
たくさん伝えたいことがあるのに、掠れた声で愛しいその名を呼ぶのが精一杯だった。
雅臣は全てお見通しというような大人の余裕溢れる微笑みで俺を見つめ、全てを許すというように優しく唇を包んでくれた。
「少し長くなりますが、僕の話を聞いてくれますか?」
顔を俺の肩に乗せて耳許で囁いてきた雅臣に頷くと、何かを決意するように俺の体を抱く腕の力が強くなった。
そして雅臣は、ゆっくりと語りだした。
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