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魂が体に戻った後、僕は一条を継ぐつもりはないと祖父に告げました。
ですが、認めない、の一言で僕の訴えに耳を貸さない祖父は、担当医師から拓也の存在を聞き出し、拓也と拓也のご家族の身の安全を守りたいのならば、有栖川の娘と結婚して一条を継げと迫ったのです。
僕が本心では一条を継ぎたくないと気付いていた妹の千鶴は、常々僕の代わりに一条を継ぎたいと言ってくれていたので、思い描いていた夢の話をしました。
一条財閥が資金援助する施設の一つに、遺伝子研究をしている施設があります。
どんな細胞にも変化する万能遺伝子を見つけ、実用化しようとしている施設です。
中学生の頃に其処を見学に訪れた僕は、すぐに不治の病も治せるかもしれない万能遺伝子の虜になりました。
長期の休みの度に施設に入り浸り、研究員達の傍らで雑用を手伝いながら、いつか共に研究ができたらと思いを馳せていたのです。
万能薬を開発したいという拓也と同じ夢を、僕も抱いていたんです。
千鶴には夢の話と共に拓也の話もしました。
霊体になって出会った同性を愛したという夢物語のような話も、僕がどれほど拓也を求め愛しているのかが伝ったのか、千鶴は信じてくれて二人の愛を応援すると言ってくれました。
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