3.初恋遭遇

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◇  西へ傾き始めた太陽が白亜の鉄筋校舎を照らす。  白亜の校舎の名は県立西高等学校。  今現在、生徒玄関から見上げる形で飾られた大時計の針は四時を差す。  南向きに作られた玄関へ日差しが斜めに差し込み、屹立するスチール製の下駄箱が長い影を校舎内へ伸ばしていた。  入学式を数日前に終えたばかりの春とはいえ、真っ直ぐに校舎内に差し込む西日は眩しい。  しかし、暑さを感じないのは桜の季節特有の優しい風が肌を撫でるため。  ほんの十数分前までが下校のピーク時間であり、部活に興味のないものはサッサと帰宅し、部活動に属している者はすでに各部室に向かっているはずの時間。  生徒玄関の奥、中央階段に人影がぽつんと立っていた。  西日で長く伸びた影は真新しい紺のブレザー姿の女子。  そのシンプルなデザインは、ここ県立西高校のものだ。  折り目も真新しい制服と、胸元に結ばれたリボンの色が黄色であることから、彼女が数日前に入学したばかりの新入生だと知らせている。  彼女は下校のピーク時間から、一人無言で中央階段の前に立ち尽くしていた。
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