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ピークを過ぎてからも、彼女は帰宅する訳でもなくただ立ち続けている。
そんな彼女の姿に奇異を覚え、何人かの生徒が目に留めはしたが、話しかけた者は誰一人いない。
また、彼女に目を留めたのは全て男子生徒だった。
目に留めるのは当然で、彼女は充分以上の美少女だったのだから。
肌の白さは、まるで唯の一度も日の光を浴びたことも無いのではないかと思うほど白く、黒く艶やかな髪は背中に付く位の長さで美しく揃えられている。
闇に輝く白銀の月。
彼女に相応しいのはそんな言葉だろう。
だが、そんな彼女に目を留める男子生徒の誰一人として、声をかけようとする者はいなかった。
手を触れれば容易に崩れてしまう、水面に移る月影のような儚さが彼女に見え、気後れを感じさせたのかもしれない。
人通りの無くなった中央階段と生徒玄関の様子に、彼女は小さくため息をついた。
(今日もダメだった……)
入学式の日から数日間、彼女はほぼ毎日、この時間、この場所に目的を持って立っていた。
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