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小松は今まさに自分へ向けて視線が集まっていることを自覚する。
スタジオ内のセットは眩いライトに照らされ、対照的にカメラやスタッフが居並ぶセットの外は暗い。
明るいセットに座る小松からは、暗闇を有象無象が蠢いて見える。
その姿はひどく滑稽だった。
小松にしてみれば、知識が豊富であろうと全てを知っているわけではなく、どんな事も自分が知っていることに置き換えて話しさえすれば、愚かな周囲は『何でも知っている!』と称賛するのだと経験で知っていた。
暗闇からレンズという目を光らせるテレビカメラ。
その中で、紅いタリーランプを灯らせたカメラが、彼にその目を向け逸らすことがないという事実は、もともと自尊心が強く尊大な性格である小松を満足させた。
つい数秒前、自称超能力者が目の前で見せた下らない詐術。それに対するコメントを司会の・古田太一朗が彼に意見を求めたことで、今このスタジオで最も注目されている事実を理解している。
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