1.宣戦布告

7/27
前へ
/700ページ
次へ
 やれやれ……。今日日、手品師だって長袖なんぞ着はしない。着ていたとしても、これ見よがしに腕まくりして見せ、どこにも怪しいものはないとアピールして見せる。  このお隣の大国から来た詐術士は、なんとも温い世界で商売してきたようだ。  杜撰な技術で誰も怪しまず、ありがたがってくれるような場所で祭り上げられてきたのだろう。  それがこの国でも通用すると思っているのだろうか?  小松は浮かんだ冷笑を隠すためもあり、手元に置いたあったハンカチを手にし、汗を拭う素振りを見せる。  汗などかいていない。  ただのポーズ。 『これは裁判だ』  冷笑をハンカチで隠した小松は心の底から嘲笑いながら、自分に言い聞かせた。 『そして自分は検事』  善良な市民をデタラメな所業で誑かす罪人を断罪する。  それが彼の使命だと信じた。  小松は眼鏡に指先を添え、ずれを直す素振りを見せた後、自称超能力者に対して丁寧な口調で話しかける。
/700ページ

最初のコメントを投稿しよう!

275人が本棚に入れています
本棚に追加