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「実にすばらしい。まさに仁術ですな! 私も最近、肩が上がらなくなりましてね、是非その御力で治していただきたい」
その声は下卑た笑顔とともに猫なで声のようだった。
小松の言葉が分からない自称超能力者に、通訳が内容を伝える。
通訳の言葉を待つことなく、自称超能力者にも小松の笑顔の意味は伝わっているようだ。
彼は小松に向けて目を細め、さも不快そうに睨みつけながら小松への返事を通訳に伝えた。
「私の能力は、私を信じてくれる方にしか効果がありません。信じること、それこそが私の力を強めてくれます」
「信じていますとも! 信じていますとも! この肩の重みと痛みがなくなるのならいくらでも信じますとも!」
大仰に手を広げる小松。
通訳から返事を聞いた自称超能力者は渋々といった態で頷き、小松の背に立った。
その自称超能力者に向けて、小松は肩越しに声をかける。
「すみませんが、腕まくりしてやってもらえますかね?」
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