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****** ふと目が覚めた。 いつものように朝が来ていつものように支度を始めようとベッドヘッドにある時計に手を伸ばして時刻を確認する。 その直後、一気に目が覚めた。 やばい。 やばい。 やばいやばいやばい。 時刻は10:57 今から支度を始めても確実に会社に間に合わない。 入社一年目の若造がこんな時刻から重役出勤なんか許される筈も無いし、休むにしても11時近くになるまで休みの連絡をする事も許される筈が無い。 マズい。 どうしようか。 最近ようやく仕事にやりがいを感じ始めたってのに。 未だに慣れぬ事も多いが、先輩や同僚との関係もよくて居心地もいい。 …あぁ、だめだ。 思考がネガティブな事しか考えられない。 頭を抱え、シーツをたぐりよせた。 「……んぅ、…」 すると、小さな声が聞こえた。 本当に微かだが、聞こえた。 しかも布団の中から。 ………何だ今のは。幻聴か。 訝しがりながらシーツを捲って中を見る。 電気が消えた部屋の中では見えにくかったが、何かがもぞりと動いた。 大きい。 ……ひと? 次の瞬間、昨夜の事が鮮明に蘇り、慌てて目覚まし時計をもう一度見た。 デジタルのそれには日付が表示される。 2014年1月1日 午後11:05 「と、…年開けたのか」 感慨深く思いながらも、会社が休みである事に安堵した。 そうだ、昨日は事務処理で残っていたけれど、そのあとコイツと飲みにいったんだ。 二人だけで行きつけのバーに行って飲み明かしたのだ。 布団の中から寝息とともに裸の姿で眠る幼なじみが腕を伸ばして俺の脚に絡み付いた。 厳密に言うなら、恋人。 昨日までは幼なじみ以上恋人未満。 俺としては半年前からちゃんと付き合ってるつもりだったのだが、こいつとしてはそうでは無かったようだ。 それが判明したのは昨日。 『だって、俺たち、キスもしたことないだろ?』 あぁ、そうだ。 だって大切に大切にしてきたんだ。 お前の事が本当に大事だから、手を出してしまうのが怖かったんだ。 それなのに葛藤していた俺の苦労も、肉体的ではなく気持ちを伝えていこうとしていた俺の努力も何一つ報われていなかったのだと思い、……つい、切れてしまった。 怒りの方ではなく、理性の方が。  
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