アリス in グランドホテル

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 ――ねぇ、知ってる? ヒーローの条件。  幼き日の記憶がおれの中で再生される。  "彼女"は柔らかな口調で言うのだった。  ――真のヒーローってのはね、いつだって特別なの。  ――特別? それってどういうこと?  ――なにも、すごい能力を持ってるってことじゃないの。そうじゃなくて、ある意味では何一つ能力を持っていないからこそヒーローと呼べることだってあるのよ?  ――ううん、よくわかんないよ。もうちょっとわかりやすく言ってよ。  ――そうね、簡単に言えばヒーローってのは『ひとり』なのよ。  ――ひとり?  ――そう、ひとり。周りとは明らかに異なっていて、明らかに浮いている存在。それがヒーローなの。  ――それって、可哀想だね。  ――そうかしら? 私にはむしろ誇らしいこととさえ思うわ。だってそうでしょ、代償のないヒーローなんてつまらないわ。  ――…………。  ――友達がいないとか、盲目であるとか、親を殺したとか、一度死んでいるとか……そういうのが案外ヒーローの条件になったりするものなのよ。  ――どうして神様はヒーローにそんなことを求めるんだろうね。  ――だって、みんなと同じじゃヒーローなんていないの同然じゃない。そんなの、面白くないわ。  "彼女"はそう言って笑った。
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