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ひひひっ、という包帯少女の笑い声でおれは記憶の中から引き戻される。
「こいつぁ楽しいことになってんな。つーことは、このウサギ」と、彼女はおれを指さす。「こいつもまた、そういう呪いか何かを魔女から受けてるってぇ考えた方がいいんじゃねぇのか?」
「い、いや、アリス、それは暴論です」
ウサギ人間が言う通り、そんなのは暴論だ。
現におれは魔女に呪いなんて受けてはいない。でもおれはそれを拒むことなどしなかった。
「うっせーよサギ太、偶然が重なることには何か理由があるんだぜ? シンクロニシティって聞いたことねぇか? 意味のある偶然の一致。運命ってのはよぉ、なるようになってんだ」
そう、運命。
みじめなおれが、ヒーローになれるかもしれない最初で最後のチャンス。
だからこそ、おれは仮面を脱がない。
脱げばおれが嘘をついていることがばれてこの物語から追放されるかもしれない。そしてなにより、この仮面こそがおれというヒーローの象徴であったからだ。
そう、おれはウサギ仮め――
「てめぇはウサマスク」
と、包帯少女はおれを指さして言った。
…………へ?
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