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すると次はネズミ幼女を指さした。
「てめぇはネズ子」
ここにきてようやくこの少女は俺たちに名前を付けていたことがわかった。
おれはウサギ仮面ではなくウサマスク。
そしてネズミ幼女はネズ子。
なんだろう、その名は。絶妙なネーミングセンスの無さは。
それを察知したのか、帽子の青年は少女に指されると少女より先に言った。
「じゃあ、僕は帽子屋とでも呼んでください」
と。
「ひひっ、わかったよ、帽子屋ぁ」
なんということだ。
おれにはウサギ仮面というカッコかわいい名前があるというのに……。
しかし今のおれは何も喋ることができない。口の中がでこぼこと腫れ、頭の中と口から出る言葉に距離があるのだ。
だからおれがもごついてると、おれに背を向けて少女は言った。
「アリスご一行の旗揚げだぜ」
その目は遠く、遠く。
魔女の城を確かに見据えていた。
愕然としながらおれは思う。
――おれ、本当にヒーローになれるのかなぁ……?
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