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何十年って――いやいや、まさか。
だってこの町だって貿易とか…………あれ?
……そうだ、そういえばこの町は外とのつながりを一切持っていないんだ。
この町の正式名称はヴィルトール帝国。
そう、国だ。
しかし国としての面積があまりにも乏しく、皆が皆、町と呼ぶ。
魔女のヴィルトール一族が統治するこの国は、いわゆる鎖国の状態にある。それでも国として成り立つ所以の一つとしては魔法石があるからだ。
魔法石はこの町でしか見つからないらしい。どこで発掘されるのかは俺には知るよしもないけれど、魔法石の恩恵はよくよく知っている。
だから他の国々とは交流を持たない。
でもそれは、てっきり貿易だけの話だと思っていた。
「なんでなんすか! なんで出ちゃいけないんすか!」
「何を言っているのだ、お前は。この町の歴史を知らないのか? 魔女様がこの町にやってきた理由は、他の地で迫害されてきたからだぞ?」
迫害され――逃げ延びた先にこの町があった。
だから、この町の外とは関わりを持たない。人を入れず、出さない。
門番は、そう言った。
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