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でも――。
と、ひとつだけ疑問が浮かぶ。
俺が盗んだあの石は、たしか国ひとつ買えるほどの値がつくって言われてなかったっけか?
でもこの町から出られないとなると、国なんてそもそも買うことできないじゃねぇか。
「ん? んんん?」
この矛盾は一体何だ?
それとも、またべつの意味でもあるということなのだろうか?
俺は腕組みして首を傾げる。俺はバカだからどれだけ考えたところで答えなんて出なくて、出ないならまあ良いかって思うことにした。
どうせあの石は俺にはもう関係ないんだから。
あれさえあれば、あれをチスカの連中に返して頭を下げたら、もしかしてのもしかしてだけど、命だけは助けてくれるかもしれない。ボコボコにされて、でも反省しているところさえ見せたら……。
「……でもそんなの、楽観主義だよな」
どうせ石なんて見つからず、その前にチスカのやつらに見つかってしまう。
ああ、短い人生だったなあ。
しみじみと回想しようとするが、俺の人生にこれといった出来事もなくて、とりあえず初恋の女の子の顔を思い浮かべようとしたけど忘れてしまった。
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