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「はぁ」
とぼとぼと川岸を歩く。
ぼろぼろの革靴だけを見て歩く。
どうせ死ぬなら川に身を投げるってのもアリかもしれない。死に場所は自分で決めた方が、なんかかっこいいじゃん。運命だとか宿命だとか、そういうのに背いて自分の死を自分で決定する――。
たしかチスカの老いぼれは「死ぬんだったら自分で死にたいが、もう年だから死ぬこともできん」と嘆いていた。なら、今死ねる俺は幸福ものか?
なんて、考える。
考えていたから、その異変には気づかなかった。
「な、なんだありゃ」
「お、おい、川が……川が!」
誰も彼も悲鳴を上げ、中には「この世の終わりだ」「エデ様の予言の通りじゃ……!」と訳のわからないことを叫ぶ者もいた。
「なんだってんだ?」
町の人々の声に俺もそちらを向いて――絶句した。
川が、緑色に濁っていた。
きれいに澄んでいたあの川が、ちょっと目を離した隙に腐臭漂う汚らしい何かに変わっていたんだ。
「……川に飛び込むって、これはいやだぜ」
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