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―1―
「あぁん? 魔法だぁ?」と俺は言う。
「ええアリス、このネズ子さんは魔法が使えるのです」とクソウサギは答える。
いきなり何だって思われるかもしれねぇが、俺だって「何だ」って気分なんだから少し付き合え。
いやあ、よぉ。ことの発端は自己紹介からだ。
自己紹介っつったって俺たちゃ顔がないアリスご一行なんだから、そもそもそんな自己なんてねーわけで、俺が言えることはせいぜい「俺の名前はアリスだ。よろしくぴー」くらいのもんだ。
クソウサギも「私はサギ太と呼ばれています」なんて自分のことははぐらかしやがる。
帽子屋は「僕はそうですね、帽子を作ったり、衣類の修理をしています」なんて見たまんまのことしか言わないし、ウサマスクに至っては「おで、そど、どんどだうだだだめんででゅ」とイミフメイだ。
そして肝心要の今日の本題、ネズ子だ。
こいつぁいつまで経っても寝ていやがって、少しからかってやろうかと車いすを蹴ろうとしたら俺は石になった。石ってのはもちろん比喩だけど、石のように体が固まったのは事実だ。まるで身動きが取れないのだ。
で、クソウサギは「魔法だ」と言った。
「だから彼女は眠っているのです」
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