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―1―
目を覚ませば真っ暗だ。
いつもこうだ。……いや、いつもこうだったけか?
おそらく俺はどっかの箱の中で腹の中の赤ちゃんさながら丸くなっているらしい。回帰願望なんてねーぞまったく。これも全部あいつが悪い。
……いや、誰が悪いんだっけか?
まあいい、とりあえずここを脱出しねーといい加減俺の腰が悲鳴を上げるぜ。
「…………」
しかしだ。どうやら出口は俺の真上にあるらしい。
箱の中、俺は背を下にして小さな丸になっている。それもたいそう窮屈にだ。上方に手を伸ばしても何にも触れないことからそれなりの高さがある箱らしい。材質はそうだな……触った感じ、木のような質感だ。
差し込む光もないからそれ以上のことは何もわからない。
両手を動かすことはできるものの、足腰はまったく動かすことはできない。
「やべえぞ、ここから出られねぇ」
じわーっと背中に汗を噴く。
まさかだと思うが、このまま死んだりしねえよな……?
「あはは、いくらなんでも……それは……」
足は、箱の壁をげりげり擦る程度しか動かない。
腰はもとより浮かない。
唯一動く手は何をつかむこともなく宙をさまよう。
「……やべーぜ、これは死ぬ」
俺、ピンチ。
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