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心臓がひーひーわめく。噴き出す汗もこれ極まれり。
世界には火花が散ってぐにゃぐにゃとゆがむ。
おかしくなったのが世界ではなく俺自身だと気づいたときには少し冷静さを取り戻すことはできたが、やがて再び視界に幻覚の火花が飛び回る。
死にたくないぞ。何が好きでこんな狭いところで死ななきゃなんねーんだ!
拳でがつがつ箱の内側を叩く。
「おい! 誰か助けてくれ!」
残された道はこれしかないだろう。
――助けを呼ぶ。
どんなに恥ずかしかろうが、指をさされて笑われようが、死ぬよりはマシだ。
現に俺は、俺らしくもなくアホみたいな声でアホのように叫んでいた。まったくもって、こんな醜態をさらしたのは生まれて初めてだぜ。
……ん? 何か違和感を感じる。
けど、今はそれどころじゃないだろ。がっつがっつと箱を叩き、喉が枯れるほど叫ぶ。俺は今、猛烈に『生』を感じている。生きている! 俺は生きている! そうだ、死にたくないんだ、だから生きるための手段を行使していいんだ、何しろ俺は生きている!
焦りの中、俺の心はわずかに興奮していた。
こんな状況なのに、俺は楽しんでいる。
「あはははははは! 誰か! 助けてくれ! あはははははは!」
しまいには箱の内側を太鼓のように叩いていた。今日は祭りだ、俺の生誕祭だ! そうだ、俺はこの箱を出た瞬間、新たな命をもらうのだ。なんて楽しいのだろう。俺は祝福の太鼓を笑いながらバンバンバンバン!
と、その振動に呼応して、なんか揺らいだ気がした。
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