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「だったらい~な?爺さん」
「…有り難き…」
守安本家長老は深々と頭を下げ、顔が見えぬが故に真意は読み取れないが、哲には彼が喜んでいる様に思えた。
…そんな哲を守安の女性四人…子供の母親達は笑顔で見つめていた…
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…食後、棗は食器をワゴンに乗せ、テーブルを片付けた。
「下げてくる。また、来る」
棗の口数の少なさに那弥が思わず笑うと、棗は顔を赤くし俯いた。
「ごめんなさい。悪い意味じゃあないの。棗君の口数の少ない所が、真哉に似てるから、ついつい、ね」
那弥の話を聞き、棗は顔を上げ嬉しそうに笑う。
「ありがとう。羅燮と名を連ねてくれて」
(些細な事で赤くなったり、喜んだりして…物凄く素直みたいよね。
なのに何故、あんな人達と居るのかしら?)
ワゴンを押して出て行く棗の後ろ姿を見送り、那弥は考えを巡らせていた。
…棗が那弥を監禁している建物からワゴンを押して出て来ると、和彦が待っていた。
「後は私が持って行こう。早く戻りなさい」
「はい」
そして、手当てされた腕に気が付くと笑顔になった。
「御子様は、お前を気に入られた様だな。良かったじゃないか」
笑顔の和彦とは対称的に棗は哀しげな顔をする。
「…彼女の処遇は、あまりにも酷過ぎます…」
「今夜の在位式の事か?」
「複数の相手と次々に身体の関わりを持たされるなんて…」
「心配無い。感情など、無くなってしまうからな。只、快感に酔い楽しい一時を過ごして貰える事だろうよ」
悲しげな棗とは対称的に和彦は笑顔で答える。
「父さ…」
「報告」
棗の呼び掛けは第三者の介入で遮られてしまった。
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