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綺麗な男だった。
少年はその男に見とれた。そして毒の花に気に入られてしまったのだ。
「おいでなさい。」
男に手を引かれ独りぼっちの少年は連れて行かれた。
男の名前は『カストル』と言う名前だった。薄汚れた姿の少年を抱き締めれる優しさを持っていた。少年を風呂にいれて自分が幼少の頃に着ていた服を着せた。
「坊や。君の名前は何と言うんだい?」
少年は首を振った。少年は名前も貰えない程身分が低かった。カストルはそれに気が付き名前を付けた。『アルヘナ』と。
幾年か経ち、アルヘナ少年はカストルに引き取られた当時よりも話せるようになり、文字の読み書きも出来るようになっていた。
「先生、お茶、入れました。良かったらどうぞ。」
「ありがとう、アルヘナ。君も飲まないかい?」
「はい、ぜひ」
アルヘナ少年は親としてと言うよりもカストルの豊かな教養を尊敬し先生として見ていた。
「先生、僕に手伝えることがあったら言って下さい。」
「そうだね。アルヘナも本の管理をしてみるかい?」
カストルは街の本屋をしていたが、その本屋は珍しい本があることで有名であった。アルヘナはカストルを手伝えると思えると嬉しくて返事した。
アルヘナは毎日毎日、カストルと本屋を切りもりするのが楽しかった。そして何よりカストルのことを今まで以上に知れることが嬉しかったのだ。少年はもう戻れない所まで魅了されていた。
アルヘナはカストルの全てを知ろうとしていた。しかし、カストルはある一つの部屋にだけは入ってはならないと言ったのだ。初めは気にはしなかったがどんどん気になるようになる。
カストルはその部屋に入るとしばらくは出てこない。そして出てくると何処と無く冷気が漂うのだ。近付くとカストルの体が冷えているのが分かる。アルヘナが心配して毛布をかけると優しく微笑んで礼を言った。
それはカストルがたまたま茶会に行っていた日だった。アルヘナに悪魔がささやいた。『あの部屋を覗かないか』と。アルヘナは悩んでいたが気がつくとあの部屋の前にいたのだ。手は吸い込まれるようにドアノブに行き恐る恐る扉を開けてしまったのだ。
「!!」
あまりの驚きに声も出なかった。少し離れた所からだからはっきりとは言えないがアルヘナが見たのは人の死体だった。慌ててアルヘナは扉を閉めた。冷気がまとわり付く。
「先生…?」
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