銀色の追憶-1

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父上と母上は仲が良かった。 そして私達兄弟も仲が良かった。 そう、私達家族は仲が良かった。 「アルヘナ、アルヘナ。蝶々を捕まえて遊ぼう よ」 「じゃあ僕と違う色の蝶々を捕まえたら君の勝 ち、同じ色だったら僕の勝ち!」 私達兄弟はいつもこうして庭で遊んでいた。 「あーあ。またアルヘナと同じ色だ。」 「僕ら兄弟だもの。仕方ないよ。きっと父上と母 上がやっても同じ色になるよ。」 いつも二人同じ色を捕まえる。 色が違ったことなんてなかった。 ある日、父上と母上が僕らと同じ遊びをした。 でも、父上と母上は違う色の蝶を捕まえた。 母上は紅茶が好きだった。 父上も好きだった。 アルヘナも好きだった。 私は嫌いだった。 父上は本が好きだった。 母上も好きだった。 私も好きだった。 アルヘナは嫌いだった。 オルゴールが好きな私達兄弟は毎日夜にオルゴー ルを流して聞いていた。 あの日もそうだった。 気に入っていたオルゴールを流していたんだ。 アルヘナは楽しそうだった。 私も楽しかった。 でも、オルゴールの旋律は美しくすべらかに流れ ていると言うのにアルヘナは咳をした。 私は心配したのにアルヘナは平気だと言った。 次の日になってもアルヘナは咳をしていた。 母上に言うと医者を呼んでくれた。 医者は風邪だと言った。 「ほら、心配しなくて大丈夫だったのですよ」 母上は笑っていた。 でも私は笑えなかった。 アルヘナは辛そうな顔をしていたんだ。 オルゴールの旋律が狂った夜。 灰色の追憶-1 終わり
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