第1話

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しっぽ、さっきから太ももにびっしばし。 軽く痛いんだけど。 かがんで顔を近づけたら、べろーんって、あんたね。 躊躇なく、好きって言ってくれるのね。 ありがとう。 通りすがりみたいなもんなのに。 次にいつ逢えるかなんてわかんないのに。 ホントはあんたじゃなくて、 そのリードを握ってる、なんだか嬉しそうに、こっちみてる人が目当てだったの。 キラキラとひかる真っ直ぐなその瞳に、私はどう映るの? わっしわしと力強く撫ぜたってまるで動じない茶色いラブラドール。 寧ろ振れるしっぽは、更に大きく。 ご、ごめんね。 こんなに純粋な君をダシにするなんて。 恥ずかしくなって顔を上げられずにいたら、前足あげて抱きついてきた君。 堪らずひっくり返ったけど、これもバチが当たったてなもんよね。 あー、空が青い。 なんて、呑気に反省してたら、あの人が慌てて起こしてくれたの。 「大丈夫?」 って最初は焦ってたくせに。 「ひっでー顔」 怪我がないと判るや否や、盛大に笑いだした。 うん、やっぱり好き。
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