-はじまり-

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携帯をイジりながら視線を感じた。 でも気づかないフリをした。 「ねぇ。」 声をかけられ、今気づいたかのようにそっちを向いた。 何も話し出さない。 「何でした?」 「別に。ホントいい女やなー。って。」 「あんま言うと嘘っぽいですよ。」 「よく言われる(笑)」 ユウヤは笑った。 ユウヤはこっちを見ていた。私も彼を見た。 酔っているせいもあって、周りのガヤガヤが遠くの方に聞こえた。 「おめぇら見つめ合ってんじゃねーて。たわけか。」 席を外していたヨウスケが戻ってきた。 「席変わるで勝手にイチャついとけて。」 ユウヤが隣にきた。 急に距離が縮まった。 ときどき膝と膝がぶつかる。 目が合う。 「帽子とってくださいよ。」 「無理。」 「ハゲてるから?」 「そうそう。」 「えー(笑)」 他愛もない会話が続いた。 ユウヤの垂れ目は笑うとさらに垂れた。 この人ともうちょっと一緒にいたいって思った。 「ユウヤー。カズノリが次行きたいらしいよ。」 「おお。ちょっと待って。」 「あ、おねぇ、ユウヤは置いてこか?」 「いいです。連れてってください。」 「ユウヤまた振られたな。」 「うっせ。 おねぇ、番号聞いていい?」 ユウヤは携帯を出した。 「はい。」 私は自分の携帯を渡した。 ユウヤは私の携帯から自分にかけた。 「また連絡するわ。気が向いたら出て。」 「ぅん。」 会計を済ませると男たちの団体は帰っていった。 <あと5分くらいしたら出てきて。> ホストから連絡があった。
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