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久しぶりの仕事が舞い込んで来たのだが、やる気というものはどこにあるのだろうか?そんな馬鹿らしいことを考えておれはパソコンをいじりながら、そんなことを自問していた。
「美由紀君。どうする?」
「どうする?って、依頼受けるかどうかですか?」
「いやっ受けるは受けるんだけどさ。どういうモチベーションでやれば良いのか……。だってあんなニュースでもやっている事件を解決しろというばかりか、口裂け女だぜ。雲を掴むような話というか、雲に乗るような話だろ」
「雲に掴むのと雲に乗る違いが分からないのですが……」
おれが吐き捨てたように言ったセリフを美由紀君は真面目な表情で拾い、聞いてきた。ってか、そんな例えをマジで聞き返さないでよ。と弱気な心の声があった。
「そんなことはどーでもいいよ。とりあえず、何をしたら良い?」
「逆に先生は今、何をしているのですか?」
美由紀君はおれのいじっているパソコンを覗き込むようにして聞いた。おれは阿吽の呼吸のタイミングで覗き込むと同時にパソコンの画面を少し美由紀君に見やすいようにズラした。
「あっ、口裂け女のこと調べているのですね!珍しく真面目ですね」
「珍しくって何だよ?何、見ていると思った?」
「アダルトなサイトかと思われました」
「おれももう二十六歳だぜ。そんな若い行動はとれないよ。ってか、普通に分かるでしょ」
「でも私、あまり普通と言われたことがなくて」
「……いやっそんなことは置いといて、これこれ!!」
少しだけ気まずい雰囲気が流れてしまった。おれ慌てて話を逸らすようにパソコンを指差した。調べていたことに話を変えようと思ったのだ。
調べていたことは口裂け女と遭遇した時の対処法だ。まずはいるかどうかを考える前に、もし……もし口裂け女と遭遇した時に何をしたら良いか分かってないと危ないと考えたのだ。
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