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「こんなことあって欲しくはないけど、可能性として高いことで、行方不明の人達が全員亡くなってしまっていたら、それに加えて犯人が口裂け女だったら、最悪としか言いようがないよね」
誰もが願っているだろう行方不明者の生存を。しかし生きているのならどうしているのだろうか?戻ってくるのだろうか?行方不明者の家族はそういう不安があるだろう。家族だけじゃなくて、行方不明者の友人もそうだろう。
事件について関わってみると、色んな気持ちになる。そして口裂け女が本当に実在するのではという気持ちもほんの少しずつ強くなっていくのだ。
「そういえば先生。和久(カズヒサ)君の帰宅道、調べましたよ」
和久君とはトモ君が依頼した行方不明の友人のことだ。亀梨(カメナシ)和久君だ。美由紀君はおれの前にある机にファイルを置いた。おれは数回頷きながらファイルを手にした。
「ありがとう。他の行方不明の人達のも何人か調べてあるじゃん!」
ファイルには市内の地図が挟まっていて、そこには行方不明者の名前と共に行方不明になった日の一番近い帰宅経路が赤線で引かれていた。
「やっぱり近道で帰ると……」
おれは地図を見ると、そう呟いた。全ての赤線が近い帰宅経路だと事件現場と思われている場所を通っていた。他の道もあるが、それは遠回りになるのだ。学生の性分か、みな近道で帰りたいことから、事件が起きていても、その道を通ったのだろう。そう考えられた。
「学生は大人の注意を聞かないのが分かるね」
冗談半分で笑いながら言った。これで行方不明者本人達が自分達で消えたと思われるのが弱くなった。
「さて口裂け女でも人の犯人でも何故、この場所か?ということが気になるけど、もう外も暗くなってきたし、事件現場に向かう準備するか」
「準備ですか?」
「あぁ、手の平に人と言う字を書いて、ポマードで髪の毛をセットしないとな」
ポマードを使って髪の毛を整えた。人生で初めてポマードを使ったが、何かワックスと違って変な感覚だ。美由紀君はその間に、自分の手の平に人という字をマジックで書いていた。
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