その参・遭遇

8/8
前へ
/74ページ
次へ
 口裂け女はおれを掴みにかかろうときたが、ギリギリ反応出来て避けられた。どうすれば助かる?? 「田中さんの友達なんだ」 やっと思い出し、そんな言葉が出た。すると口裂け女は動きが止まった。 「た……なか……さん?」 口裂け女は田中の名前に反応したらしい。動きが完璧に止まった。おれはすぐに美由紀君のいる階段の上までのぼる。口裂け女は少し経つと動き始めたが、階段をのぼる気配がない。 まだ落ち着かない。どうすればいい?しかし口裂け女は階段の下で何故かうろたえる。何が起きている?このままここに居れば助かるかもしれない。 美由紀君は恐れていて言葉も出てこないし、動きも硬直している。おれは美由紀君が口裂け女から隠れるようにその場に座る。 「うっ……いっやぁ~」 口裂け女は頭を抱え叫んだ。そしてそのまま独りで苦しみ、歩いて目の前から消えていった。何が起きたのか理解が出来ない。しかしおれと美由紀君は助かったのだ。 混乱していておれも美由紀君もすぐには動けなかった。少し経つと、おれはやっと緊張の糸が切れたように大きなため息を吐いた。 「助かったんだよね」 呟くように言った。美由紀君は黙ったまま何度か頷いた。そして二人の気持ちが落ち着いてから、おれと美由紀君は事務所に戻った。 おれは口裂け女と遭遇してしまったのだ。これでこの事件に口裂け女が関わっている説になったのだ。
/74ページ

最初のコメントを投稿しよう!

6人が本棚に入れています
本棚に追加