その壱・依頼

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「え~とまずは、探偵も仕事でお金を要求するのだが、値段についてはこの紙にある。話を聞く前にこの紙を見て欲しい」 おれは向かい合っている間にある机に置いてある紙を取り少年に渡した。少年は慌てるようにその紙を取り、目を通し始めた。 「基本、相談料は安く設定してあるし、依頼のために使用した費用も五割のみの負担だ。んで、依頼が成功したら、その時に料金はまた請求する。いくらかはおれの匙加減だ」 おれは簡単に説明をして、言い終えるとニコッと笑ってみせた。少年は見るからにはてなマークが頭に浮かんでいる。おれはソファーに深く腰掛けた。 「それでは仕事に入ろうかな。まずはこれはおれの名刺だ」 おれはポケットから名刺入れを出して、名刺を一枚少年に渡した。少年は恐る恐る名刺を受け取る。 「それじゃあ君の名前を聞かせて貰えるかな?」 「あっはい。僕の名前は山下智也(ヤマシタトモヤ)です。高校二年生です。それで先週に僕の友人が行方不明になって捜してもらいたいと思って来ました」 「ほほ~う。友達捜しね。やっとこの依頼がきたか」 おれは頭で考えていたことをそのまま口に出してしまった。おれは身を乗り出すようにして、少年に身体を近づけた。 「んじゃあトモ君。行方不明になった日のその友人についての話を伺いたいのだけど大丈夫かい?」 「はっはい。って、トモ君?ですか?」 「そう。智也君だからトモ君だろ。そんなことは良いから話を!」 「はい。……いなくなった日は僕も友人も予備校だったんだ。それでその予備校の帰りで、僕は友人に一緒に帰ろうと誘われたんだけど、行方不明が多くなっているということで親が車で迎えに来てくれて。それで友人は一人で、自転車で帰宅していったんです」 「友人は一人で帰ったのか。それは捜すのは困難だな。どう帰宅したかを予測しなきゃならないからな。誘拐だとしても犯人の目星は警察でもついてないからな」 おれは背もたれに寄り掛かり天井を見た。この依頼は世間で多発している行方不明の事件の一つだろ。警察でも何の手掛かりを掴めてないのにおれが解決するのか?普通に無理だろう。おれは一口だけお茶を飲んだ。
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