その壱・依頼

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「きっと口裂け女が攫ったんですよ」 えっ?おれは言葉には出ないが、そんな言葉が頭に浮かんだ。嘘でしょと言おうと思ったが、トモ君の顔を見ると嘘の雰囲気は無い。トモ君は決意したかのような瞳だったのだ。 「……何で口裂け女?」 やっと出てきた言葉だった。妖怪とか幽霊と言う説も良く雑誌などで書かれていたが、口裂け女とまで書かれていたことは無かった。……いやっ、何かの雑誌で見たかもしれないが、その時のものは妖怪系がたくさん書かれた雑誌だった。 「実は僕の幼馴染が、友人がいなくなった日の夜、予備校から帰って通るだろう時間に白いワンピースを着た、綺麗な女性を見たと言っていて、それ口裂け女なんじゃないか?と思っていて」 「口裂け女……。その幼馴染は?」 「あっ無事です。それにその口裂け女と思っている女性を遠くから見ただけらしいので」 トモ君は言い終えるとお茶を一気に飲み干した。口裂け女のことが書かれていた記事を思い出していた。行方不明になった人は二件目を除いて全てが男の子で、口裂け女の綺麗さに引っ掛かったのでは?と書かれていたが、二件目が女の子ということで、それは可能性として低いのでは?と書かれていたのだ。 「でも口裂け女の説で捜査するのは楽しそうですね」 美由紀君がおれの座っているソファーから身を乗り出すようにして言った。おれはその勢いで座っている体制を少し崩したが、そのまま何と無く、前のめりになった感じに見せるようにした。 「確かに楽しそうだし、警察が全く検討ついていないのでは、やはり妖怪、幽霊説で考えるのが良いのかな?それに今回はトモ君の幼馴染の子が怪しい女性を見ていることから、口裂け女説が捜査しやすいかな」
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