その壱・依頼

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「あのっ、楽しそうって……大丈夫なんですか?」 「ダイジョーブ!ダイジョーブ!ダイジョーブ博士!元々雲を掴むような話だろ。そのくらいの方が上手く行くんだよ。んまぁ不満なら他の探偵事務所を当たりな」 こんな依頼、生真面目にあたるだけ労力の無駄だと思っていた。んまぁニュースに取り上げるだけの事件で警察が何の手掛かりもないのなら、気楽に行こうか。 「そういえばトモ君。トモ君の幼馴染って女の子?」 「えっ?あっはい。そうですけど、何で?」 「おれは探偵だぜ。そんなのお茶の子さいさいだよ」 おれは自慢気に鼻っ面を親指で弾いてみせた。美由紀君は何気におれとトモ君が飲んだお茶をしまっていた。 「それじゃあ最後にトモ君、これに記入してもらえる。電話番号はトモ君と確実に繋がる方でね。何度か連絡すると思うし」 「はっはい」 おれは紙を渡して必要事項を書いてもらった。トモ君はスラスラと書いた。 正直、この依頼は上手くいかないと思っていた。おれなんかが解決出来たら、もうとっくの遠に解決していると思う。それにこの探偵事務所に依頼に来ることは少なく、捜査などには実は不慣れなのだ。それでこんな大きい山。只今のおれ、希望の光と言うものは見えていない。
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