6人が本棚に入れています
本棚に追加
僕の彼女は、薄く息づいている。
世界と繋がるための、唯一の手綱に、その細い指を絡めるかのように。
真白なベッドに横たわり、身体から、何本ものプラスチックのチューブが伸びている。
機械に頼って、ようやく生きている、僕の彼女。
彼女の冷たい青白い手と、僕の手を握り合わせた。
微かに震えるようにして、瞼の開いた中の、その黒い瞳は潤んでいた。
「シュウ?」
吐息混じりに、彼女が僕を呼ぶ。
「そこに、いるの?
シュウ?」
「いるよ。
キミコと僕は、手をつないでいるんだ」
「そうなの?」
「そうだよ」
彼女の手が、ほんの少し、僕を握り返した。
「お願いが、あるの」
うつらうつらと、細く開いたり、閉じたりする瞼。
目の端から、雫がこぼれ落ちて、彼女のこめかみを伝った。
「シュウ。
私を、一緒にしてね。
死んだら、一緒に埋めて」
僕は、彼女の涙を指ですくい、口に含んだ。
まるで味はしなかった。
塩辛くない涙。
彼女の命の最期を感じた。
最初のコメントを投稿しよう!