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キミコの葬儀は、彼女の故郷である小さな田舎町で行われた。
彼女の親族に快く思われていない僕は、葬儀に出ることができなかった。
大粒の雨がフロントガラスを叩く。
僕は車を走らせていた。
ワイパーが左右すると、わずかに視界が開けて、またぼやける。
鬱蒼と茂る木々が、道の両側から迫っていた。
あとは重たく垂れた曇空が、世界のすべてをふさいでいる。
閉ざされた、暗い、山の中。
目的地は決まっているような、決まっていないような、どちらでもいい気がした。
ただ、静かに考える時間がほしかった。
車の運転でも、電車に乗るでも、人込みに紛れて歩くのでも、よかった。
同じ場所にとどまらないで、考えたかった。
僕の彼女のこと。
僕の彼女の遺言のこと。
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