第1章・再会

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昔を思う。 それは僕たちが出会ってからの、10年間の歴史だった。 僕と2人でいるとき、キミコはあまり喋らなかったし、笑わなかった。 そっと寄り添うように、ただ隣りにいるだけだった。 口下手で、不器用で、脆かった。 いつもどこか遠くを、焦点の合わない瞳で、見ていた。 細くて、青白くて、不安げな顔をしていた。 いつも怯えるように、隠れるように、生きていた。 そんな彼女のことを、僕だけが、見つけた。 僕は彼女を好きになった。 彼女も僕を好きになった。 お互いに、愛し合っていた。
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