第1章・再会

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知らないうちに、車は森を抜けていた。 畑を左右に見ながら、狭い道を進む。 ぽつりぽつりと瓦葺きの家を見るだけで、あとは何もない。 ぐるりを山に囲まれた、盆地の村だった。 途端に、強烈なデジャヴに襲われた。 驚いて、ブレーキを踏む。 「あ」 放心している目の前で、ワイパーだけが規則正しく動き続けた。 当てもなく、車を走らせていたつもりだった。 しかし僕は、無意識に、目的地を選んでいたのだ。 この村に以前、1度だけ、来たことがある。 同じように、この車で。 すると、堰を切ったように、記憶の波が押し寄せた。 頭の中を、ぐるぐると掻き乱され、視界が明滅した。 ああ。 この村に来たときの記憶を、なぜ忘れていられたのだろう。 いや。 本当は、忘れたフリをしていたのだ。 意識の深層の部分では、ずっと覚えていた。 それは僕と彼女の思い出。 そして、僕と彼女と『彼』の思い出。 久々に引っ張り出した記憶は、鮮烈に過ぎて、吐き気を催すほどだった。
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