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「おいっ無能。こんなところで何してんだよ」
夕暮れの図書館帰り、村の石畳のメインストリートをショウが歩いていると、背後から急に声がかかる。
ショウがこの世で最も耳にしたくない声だった。
そのダミ声を耳にしただけで、背筋が凍りつき、心臓は危険を告げる警報のようにけたたましく鼓動する。
長年の間に形成されたその声に対する体の反射だった。
「おいっ、ショウお前だよ。そこのむ、の、うっ!」
ダミ声は村中に聞こえるような大きな声で再度ショウを呼ぶ。
恥さらしもいいところだ。
無視したいのは山々だが、その後何されるか分かったものではない。
この前勇気を出して無視した時は、家中のガラスを割られるという悲惨な目にあった。
ショウが最悪の気分で振り向いた先には、ハリネズミのように生えた短い金髪に、真っ黒なローブの上からでも体格がいいのが分かる長身の少年が立っていた。
後ろに二人の取り巻きを従え、決して友好的とは言えない笑みを浮かべている。
彼の名前はバンディ=バーカス。
この町一番の名家であるバーカス家の長男である。
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